
水難救助隊への入隊を目指す消防隊員の方には、いつもお話しすることがあります。
もし入隊までに半年や一年あるのであれば、スキンダイビングなどの試験対策だけで終わらせるのは、少しもったいないかもしれません。
なぜなら、その期間を利用してダイビングのプロ資格や指導者資格レベルまで学んでおくと、入隊後の成長速度が大きく変わる可能性があるからです。
試験合格だけを目標にした場合、入隊後に一から知識や技術を学びながら経験を積んでいくことになります。
一方で、事前に体系的な潜水理論やトレーニング方法、安全管理などを学んでおけば、現場経験こそ先輩方には及ばなくても、訓練や教育の考え方を理解した状態でスタートできます。
すると、先輩から教わる内容の理解も早くなり、隊への貢献も早い段階からできるようになるかもしれません。
もちろん、消防の潜水活動において最も重要なのは現場経験です。
現場でしか学べないこと、実際の救助活動の中でしか身につかない判断力や対応力は数多くあります。
しかし、その経験を吸収するための土台となる知識や技術が事前に備わっているかどうかで、その後の成長曲線は大きく変わるように感じています。
実際にココモには、地元だけでなく広島など各地の水難救助隊で隊長クラスを務める方々も、プロ資格や指導者資格の取得に来られます。
そのような方々から講習中によく伺うのが、
「もっと若いうちに学んでおけば良かった」
という言葉です。
現場経験を積み重ねてきたベテランの方々であっても、体系的な潜水理論や安全管理、教育手法を改めて学ぶことで、
「部下への指導の幅が広がった」
「訓練の意図をより明確に伝えられるようになった」
「安全管理について改めて見直す良い機会になった」
といった感想をいただくことがあります。
中には、
「この内容を若い頃に知っていたら、もっと早い段階で活かせたと思う」
と話される方もおられます。
私はそうした言葉を聞くたびに、入隊前に時間のある方ほど、このような学びに触れる価値があるのではないかと感じています。
半年から一年の努力は長いように感じるかもしれません。
しかし、三十年近い消防人生の中で考えれば決して長い時間ではありません。
多くの人は、
「そこまでしなくても入隊できる」
と考えます。
確かにその通りです。
入隊することだけが目的であれば、それでも十分かもしれません。
しかし、
「みんながやらないから自分もしない」
のではなく、
「みんながやらないからこそ価値があるかもしれない」
と考えられる人が、将来的に大きな差を積み重ねていくのではないでしょうか。
入隊前の半年から一年は、現場経験こそ積めないものの、自分自身を成長させるための貴重な時間です。
もし今、潜水部門を目指して準備をされているのであれば、試験合格だけで終わらせず、その先の十年後、二十年後、三十年後の自分を見据えてみるのも良いかもしれません。
その半年が、将来の自分への大きな贈り物になる可能性があります。
