
1989年から国内外の現場を見てきました。
都市型スクールに始まり、伊豆、石垣島、ハワイ、そしてオーストラリア、パラオ、グアム、マレーシア…。世界中でアマチュアからプロまで、様々なダイバーと接してきましたが、多くの方々も感じているであろう”ある違和感”が拭えません。
「○○っていいよね、ずっと居たいわ」「帰りたくなくなる」
リゾートで出会うダイバーがよく口にする言葉です。しかし、本当にその土地が好きで、生活そのものとして溶け込んでいる人はごくわずかです。ほとんどの人は、日常のストレスや不満を忘れるための現実逃避として、ダイビングを選んでいるに過ぎません。

もし本当にその海や土地、文化や生活に惚れ込んでいるなら、移住しているはずです。しかし多くはそれができない、あるいはしようとしない…
なぜか…
「今の人生がうまくいっていない」からこそ、ストレス発散という名目の「現実逃避」や「リア充アピール」としてのリゾートダイビングに依存している。そうした構図が見えてきます。
「幸福とは未来にあるものではなく、現在ある自分の中に見出すものだ。」
── アルベルト・シュヴァイツァー(哲学者・神学者)
「私たちが逃げ出すのは現実ではなく、自分自身からだ。」
── セネカ(古代ローマ哲学者)
「楽園は、私たちの足元にしか存在しない。」
── ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(詩人)
現実逃避ではなく、人生の見直しを
ダイビングインストラクターをしていますが、時に思います。「いや、あなたはダイビングしてる場合じゃないでしょう」と。
ストレス解消は否定しません。でも、そのお金と時間を使って、本当の意味での人生の見直しに使ってほしい。自己投資や学びにこそ、未来があります。
私のもとにはリゾートダイバーだけでなく、地元で日常的に潜るダイバーも多く来られます。
リゾートダイバーにとってのダイビングは「非日常」の特別な体験かもしれませんが、地元で日常的に潜っているダイバーにとっては、それは日々の「日常」そのものです。
これは、美味しい食事にたとえると違いがよくわかります。
- リゾートダイバーにとって、美味しいごはんは非日常。
- 地元のダイバーにとっては、美味しいごはんは日常。
そう考えると、ダイビング業界やテレビが語る「憧れのダイビングライフ」や「夢のリゾートでのひととき」というイメージが、いかに作られた幻想であるかが見えてきます。
「隣の芝生は青く見える。だが、自分の庭を耕す者にこそ実りは訪れる。」
── 英国のことわざ
「幸福の青い鳥は、いつも自分の家にいる。」
── メーテルリンク(劇作家『青い鳥』)
「人は遠くを探しすぎる。だが、探しているものは自分の足元にある。」
── 老子
リゾートダイバーの中には、地元で潜っているダイバーよりも自分の方が上だというような雰囲気を持っている人が少なくありません。ですが、実際には、同じくらいの経験本数で比べると、地元で継続的に潜っているダイバーの方が、技術的にも経験的にも明らかに上手なことが多いのです。
この背景には、リゾートダイバーに共通する何らかの思い込みがあるように感じます。ダイビングに限らず何にしても、上手な方がより深く、より豊かに楽しめるのは当然のこと。にもかかわらず、そういった事実が見過ごされている現状には、少なからず残念な気持ちを抱いています。
「自由とは、他人から与えられるものではなく、自分自身でつかみ取るものである。」
── ジャン=ポール・サルトル(哲学者)
「人生の秘訣は、楽しむことではなく、意味を見出すことにある。」
── カール・ユング(心理学者)
憧れの職業の現実とは?
インストラクターとして「夢の場所で働く」ことを実現した人は大勢います。でも、その多くが長く続けられず辞めていく。なぜか? 勤務インストラクターでは生活が成り立たないことが多く、夢と現実のギャップに耐えられないからです。
もしダイビングを仕事にするなら、1〜2年で独立起業できるというのが大きな利点の職業です。ネットで少し調べれば、業界の構造や収入の実情はすぐにわかる時代です。
「青い鳥」は、自分の足元に…
私はたまたまダイビングと出会い、今では自由な人生を謳歌できています。…と、いつも控えめに表現しますが、実のところ、自分に合った生き方を求めて探し続け、考え、試し、ようやくダイビングという道を見出しました。
最初は素人意識のかたまりでしたが、学び、鍛え、磨きつつ自分の道を突き進んできました。外から見れば、必死に見えたかもしれませんが、それは、自分で自分の人生を作るという行為が、とてつもなく熱中できるものだったからでしょう。
私にはダイビングが向いていましたが、同様に「ダイビングを仕事にしましょう」と誰にでも言う気はありません。人にはそれぞれの道があります。でも、現実逃避のためにダイビングをしている人には、「逃げた先」で少し立ち止まり、自分自身と向き合う機会を持ってほしい。

ダイビングという時間を、ただの逃避ではなく、未来へのヒントにする…
ダイビングだけでなく、何であってもそういうことの積み重ねで人生はできているものです。
「知識への投資は、常に最高の利子を生む。」
── ベンジャミン・フランクリン(政治家・発明家)
「未来を予測する最良の方法は、自ら創り出すことである。」
── ピーター・ドラッカー(経営学者)
「学びて思わざれば則ち罔し、思いて学ばざれば則ち殆し。」
(学んでも考えなければ無駄、考えても学ばなければ危うい)
── 孔子