概要
「習うより慣れろ」は危険な落とし穴
「習うより慣れろ」という言葉を信じて、まずは自分でやってみる──。その姿勢を「チャレンジ精神」や「自発性」と評価する向きもあるでしょう。しかし現実は…
「最短で、かつ本質的に上手くなる」には、習うことしかない
という事実です。
■ なぜ「習うより慣れろ」が誤解されているのか?
「習うより慣れろ」というのは、本来は「頭で考えるより、まず体験せよ」という趣旨の言葉です。しかし現代では、これが以下のように誤って解釈されることが多くなっています。
- 「教わらずに、自己流でやればいい」
- 「練習すればそのうち自然とできるようになる」
こういった考えは、一見して手軽で効率的に見えますが、実際には遠回りであり、危険です。
■ モータースキルは「理解してからできる」ものではない
スポーツや武道、楽器やダンスなどに代表される「モータースキル(運動技能)」は、テニス・ゴルフ・スキー・格闘技などすべてに共通して、
頭で理解してからできるようになるのではなく、身体ができるようになって初めて本質的に理解できる
という特性を持ちます。
✖理解してからできる
○できたら理解できる
「理屈では分かっているのにできない」という状態は、まさにその象徴です。
《詳細》
モータースキルとは?運動スキル(英語: motor skill)あるいは運動能力は、生物に、骨格筋を効果的に役立たせることを要求するスキルのこと。運動スキルと運動コントロールは脳、骨格、関節、神経系が正常に機能していることに依存する。運動発達は、力、姿勢制御、バランス、知覚スキルの発達だけでなく、手足の行動と連携の発達でもある。
運動スキルは二つに分けられる。
①頭部持ち上げ、寝返り、起きあがり、軽業、匍匐、歩行を含む。総合的な運動のスキル(gross motor skill)(粗大な運動のスキル)。総合的な運動能力発達は通常ある傾向に従う。一般的に小さな筋肉はたちまち大きな筋肉になる。従って、総合的な運動能力発達は(細かい運動のスキルのような)他の分野のスキルを発達させる基礎となる。発達は一般的に全体から細部へと進む。乳幼児はまず頭脳のコントロールを習得する。
➁小さなものを巧みに扱う、ものを手から手へと移す、様々な反射神経を要するアビリティを含む細かい運動のスキル(fine motor skill)。細かい運動のスキルは、とりわけデリケートなタスクを達成するために、非常に正確な運動動作の行使を伴う。細かい運動のスキルの例には小さなものを抓む、切る、塗り絵、筆記(ライティング)、ビーズ通し、(親指と人差し指を)指先で抓む(pincer grasp)ことなどがある。細かい運動のスキルの発達はより小さな一連の筋肉を必要とするスキルの発達を伴う。
《詳細を隠す》
■ 成功体験を通してしか、技術は定着しない
私たちは、「できない」状態から「できる」状態へ移行するために、膨大な試行錯誤を行います。その過程で、たまたま「できた」瞬間を体験することで、
- 身体の使い方
- タイミング
- 重心移動や筋肉の連携
といった要素が、非言語的・感覚的に結びついていきます。このプロセスは、
正しく導いてくれる「教えられる人」から「直接リアルタイムに」習うことで、飛躍的に加速されます。
正しく習うことで上達が加速しやすい理由です。
■ 癖は早期に身につき、修正は困難(不可能?!)
最も避けるべきなのが、誤った動作や無理な力みなどの「悪い癖」を身につけてしまうことです。
自己流がとても危険な理由です。
一度定着した癖は、まるで利き手を変えるように、修正に多大な労力と時間を要します。場合によっては、直せずにそのまま挫折するケースすらあります。
■ 本当に上手くなりたいなら、「習ってから慣れろ」
効率的に、確実に、正しい形で上達したいならば、
「習ってから高める」ことが唯一の道
なのです。これは決して遠回りではなく、むしろ最短の近道です。
- 自己流より、正しい基礎
- 成功体験の再現性
- 無駄のない反復
すべてが、「できる人で教えられる人」に早く出会い、早く習うことによって実現できます。
■ 真の「安易な道」とは?
多くの人は、「教わる」より「やってみる」方が楽だと考えます。けれど、実際にはその”気分の楽”が、将来的には”最大の苦労”を生むことになる。
「変な慣れ」をつける前に、「正しく習う」ことこそ、上達するための本当の安易な方法である。
上手くなりたい、深く理解したい──そう願うなら、最初の一歩こそが肝心です。正しい学びを得続けることで、その先の世界は大きく変わるのです。