近年、アクティビティサイトや旅行会社が提供するオプションツアーで、さまざまなジャンルの体験を「少しずつ楽しむ」ことが流行しています。これらは、一見すると手軽で魅力的な選択肢のように思えますが、実際には浅い体験の繰り返しに終わり、本質的な満足感や成長を得られないことが少なくありません。
【短気な方はマイルド版へ】
その原因の一つは、利用者が事前に自分自身で体験内容を十分に調べたり判断したりすることなく、提供側の宣伝文句を鵜呑みにしてしまうことです。どんな分野でも、最初の段階を少し試しただけではスキルの向上は見込めず、その分野の本当の魅力を深く楽しむことも難しいのが現実です。成長には一定の時間と努力が必要であり、成長曲線が示すように、最低限の習熟にすら時間がかかります。
この現象は、旅行やレジャーに限らず、就職、恋愛、学問、友情など、人生の多くの分野にも共通して見られます。「多くの選択肢を試して自分に合うものを探したい」といった言葉は、一見合理的に聞こえるかもしれませんが、実際にはどれも中途半端に終わりやすく、時間や資源の浪費につながる可能性があります。特に、就職や恋愛といった人生の重要な局面でこのような考えに基づいた行動を取ることは、長期的な成果を得る上で大きな障害となり得ます。
さらに、「いくつか試すだけだから大丈夫」と考える人もいますが、そうした環境に身を置くことで、似たような浅い関与を繰り返す人々の集団に巻き込まれることは避けられません。その結果、深い人間関係や信頼を築く機会を失い、最終的には自分自身の人生の質を損ねるリスクがあります。古くから伝わる「朱に交われば赤くなる」という言葉が示すように、周囲の環境の影響は思った以上に大きいのです。
筆者は30年以上にわたり、レジャーやスポーツ分野で指導者として活動してきた中で、このようなケースを数多く目の当たりにしてきました。一見すると魅力的に見えるこれらの体験サービスが、実は利用者の成長や本質的な満足感を妨げる「静かな毒」として機能していることを指摘せざるを得ません。
こうしたサービスを利用する際は、自分の時間や資源を本当に価値あるものに使えているのかを慎重に見極めることが重要です。表面的な楽しさに流されるのではなく、より深い充実感を得るためには、目的意識を持った行動が求められます。