こんにちは!ココモの唐土です。
以前は「窒素酔い」といってました。今はこのガスによる感覚麻酔を「ガス・ナルコシス」、「ガス昏睡」、「ガス酔い」…といいます。ダイバー認定されて一定期間たった方がプロ資格を目指される方は今一度整理ください。
★医療で使われるCO2ナルコーシスとは別物として考えましょう
また、その状態を「深海の恍惚」と呼ぶということは聞いたことがあるでしょうか。今回はそれら深いダイビングでの酔ったようになる現象についてです。
概要
ガス・ナルコシス
深度下では、窒素やその他のガスが相互に作用しあうことでナルコシス(昏睡)が起こるので「窒素酔い」ではなく「ガス・ナルコシス」といった方が用語としては正確です。[7]PADIエンサイクロペディア
どこで起こるか[8]PADIエンサイクロペディア
個人差があるがほぼ30mの深度ではっきりその作用が現れます。そして深度が増すにつれ作用は増長し、深度55mに達するまでにはほとんどのダイバーはガス中毒になるか、多幸感に浸っていると自覚できるようになります。
実験と多くの体験から、60m以深ではガス・ナルコシスが集中力や正確な観察力を損ない、視覚や聴覚の異常、幻覚、めまい、妄想、憂鬱などの症状を体験すると報告されています。
ただし、一般のダイビングでの最大深度は40mと設定されています。
ナルコシス(昏睡)について[9]PADIエンサイクロペディア
- ナルコシス自体に害はなく、ほとんどのダイバーは水面に達する前に回復します。
- ダイビング中のナルコシス間に起きたことの記憶をなくすということ以外の後遺症は知られていません。
マティーニの法則[10]PADIエンサイクロペディア
ガス・ナルコシスの影響は、アルコールの影響にたとえられ「マティーニの法則」と呼ばれることがります。
深度30mではマティーニ1杯飲んだのと同じように酔うとされ、更に15mごとに1杯飲むのと同じようになるというイメージです。
窒素に酔う?[11]PADIエンサイクロペディア
以前は呼吸ガス中の「窒素」に酔うと言われていましたが、現在ではレジャーの深度範囲では・・・
- 空気
- エンリッチド・エア…など
窒素の割合には関係無いと証言する人が多いです。[12]ダイバーによる主観的意見
何故酔うか・・・[13]PADIエンサイクロペディア
不活性ガスと言われるガスも、高圧下(深度下)では麻酔性を持ちます。亜酸化窒素[14]亜酸化窒素(nitrous oxide)または、一酸化二窒素は、窒素酸化物の一種。吸入すると陶酔効果があることから笑気ガス(laughing gas)とも呼ばれる。医薬品医療機器法に基づく指定薬物。をはじめ、ガスによる麻酔作用は圧力に深い関係があり、圧力が2倍になると作用はほぼ2倍になります。
ガスによる麻酔作用
麻酔を起こす能力はガスにより異なるが、未確認の相関関係があるからだとされている。
上の表からすると酸素は窒素より麻酔性が強いと想定されるのですが、水深90m、酸素4%、窒素96%の実験では通常の空気より麻酔性が強くなっています。酸素の麻酔作用は単純に脂肪への溶解度だけでは説明できません。
ガスの麻酔作用の個人差
薬物中毒の同様、ガスナルコシスのかかりやすさに個人差があるとされるが、実験では個人差は大きくない。
中毒が起きる深度下では次のテストで全実験者の能力後退が示されたが、あるダイバーのかかりやすは、他のダイバーに比べ、かかりやすいときと、そうでない時があり反応は一貫していない。
- 算数
- 協調運動
- 短期間の記憶力
すなわち、ダイバーは水深40mで、今日は頭がさえていても、明日も同じだとは限らない。
ガスナルコシスを助長する可能性のある薬剤
鎮静剤と思われないものの例・・・乗物酔止め、花粉症薬、下痢止め
- マレジン
- コンタック
- ロモティル
- トラベルミン
- ベンザブロック
- 正露丸…など
全て「抗コリン作用」があり神経麻酔を起こす。
メイヤー・オーバートンの仮説
全ての気体または揮発性物質は、一定モル濃度が細胞資質に浸透すると神経麻酔作用を誘発する。この神経麻酔作用は、それぞれ生物によって特徴があるが、麻酔作用そのものについてはほぼ同じである。
ガス・ナルコシス(神経麻酔作用)が起きるのは、「シナプス」と呼ばれる神経細胞の連接部で、そこで窒素は神経細胞(ニューロン)から神経細胞(ニューロン)への電気信号を送るのを妨げます。その影響が最も大きく出るのは、察知能力や体の機能調整を司る脳内部の神経組織です。これはひとつの神経細胞から次の神経細胞への情報伝達が、非常に遅くなることを意味しています。
ガス・ナルコシスの管理[15]PADIエンサイクロペディア
ガスナルコシスを制限し対応する
- 深度の制限
- レクリエーションの深度制限を40mとする
- 自分の反応度を元に深度制限をする
- ガスへの順応
- 経験と訓練によって対応する
- 短期間に数回の深いダイビングで影響を小さくする
- 集中力を高め、時間に余裕を持ち、イメージトレーニング[16]精神的なリハーサルをする
- モータースキルとして、考えなくてもできるようスキルと手順をトレーニングする
- 代替混合ガス
- 麻酔性のない(低い)ガスを使用する
- 濃度の高いガスを呼吸しないよう混合ガスを使用する
- コマーシャル ヘリオックス(ヘリウム、酸素)
- テクニカル トライミックス(ヘリウム、窒素、酸素)
練習問題をといてみましょう
実際窒素酔いのトラブルを目にしたダイバーはどれくらいいるでしょう。回避するに越したことはないのは確かです。しかし、プロとしてはより正確に認識し対応できる能力が求められます。もっとも、実際にそのような経験を勧めているのではなく、少なくとも仕組みを理解し、イメージトレーニングを行うことでモータースキルとしてのトレーニングと計画ダイビングの重要性を再認識しておくべきであるということです。
ガス・ナルコシスの
ガス・ナルコシスの特徴として次のうち、最も不適切なものはどれでしょうか。
- ガス・ナルコシスは、神経細胞間の信号伝達が妨げられるから
- ガスの神経麻酔は、脂肪への溶解度にほぼ比例している
- ガスの麻酔の強さは二酸化炭素 > 酸素 > 窒素の順である
- ガス・ナルコシスの予防に窒素の少ないエンリッチドエアが効果的
《詳細》
解答
d. 酸素もガス・ナルコシスに大いに関係していることから、空気も、エンリッチド・エアも、同じように麻酔性があるとして取り扱います。
《詳細を隠す》
症状、徴候は?
ガス・ナルコシスの症状、徴候等で最も不適切なものはどれか?
- 判断力が低下する
- 回復するのに浮上後しばらくかかる
- 体の自由がきかなくなる
- 精神的に不安定になる
- ガス・ナルコシスに後遺症は無い
《詳細》
解答 b.
ほとんどのダイバーは水面に達する前に回復する
《詳細を隠す》
注釈
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 13, 15. | ↑ | PADIエンサイクロペディア |
12. | ↑ | ダイバーによる主観的意見 |
14. | ↑ | 亜酸化窒素(nitrous oxide)または、一酸化二窒素は、窒素酸化物の一種。吸入すると陶酔効果があることから笑気ガス(laughing gas)とも呼ばれる。医薬品医療機器法に基づく指定薬物。 |
16. | ↑ | 精神的なリハーサル |